台風の目
新梢挿し。 @とAは古枝挿しの有利な点である。 若枝挿しの場合は紺勢が強いが、切り込むと多くの芽が吹き、ついダンゴ状になる。 小枝が増えるのではなく塊になって次の芽が頭部だけに集中してしまう。 混み合うと内部の芽は枯れてくる。 頭部だけが強くなりがちな樹種に共通しているが、方法としては次の通り。 茅摘み後に数多く吹く芽を必要なもの以外かいてやること。 上下の芽は取り、横に伸びる芽を伸ばしていく。 上部が常に強くなるので、立て替えも行なう.強い部分を飛ばして次の芽を立てて頭部の作リに持っていく。 これを何回もくり返すのである。 ここでもうO度、ネズミサシの性質のうち切り込み(勇定}を見ておきたい。 八ツ房系のネズミサシは茅吹きがよい。 とはいえ小品の場合、古枝(前年枝)から出る芽はやはり小さく弱いことが多い。 5月中旬ー6月中旬の新檎切り(芽摘みのようなもの)は残った新楕部分から出る芽をひとまず吹かせるためである。 奥の芽を利用したいのはやまやまだが、いきなり切り込むと弱い芽ばかりで樹作りが難しくなることがある(特に小品V。 この場合はある程度まで伸ばし、校に元気をつけておく。 これがポイントである.いつでも奥へ芽を吹かせるためには樹勢が必要(日当リも不可欠)。 伸ばしておいて7月中旬ごろに切り戻すと、奥の芽や朋吹き芽が期待できる。 ポイントをくり返すと、小品のネズミサシの場合、@幼芽の芽摘みはせず、5月中旬ごろまで伸ばす。 A新梢の基は残して切り込む.Bアタリ芽が動いてきたら植え替える。 Cネズミサシは水が好きな樹種である。 乾燥にも耐えるが根を痛めることが多い。 排水のよい用土を用いて多水で育てるのが基本。 D剪定は徐々に追い込むつもりで切る。 つまり樹勢をつけて先の方から切りつめるつもり。 山登りした人ならわかるかも知れない。 ふもとから、これから征服しようする頂上を見上げた時は、意欲万々でしょう。 しかし、いったん登りはじめたら、しばらくは頂上が見えなくなります。 いつまでも林の中をさまよっていて、それが永遠に統くような気持ちになり、ひどく疲れる。 山登りをする人のそんな時の気持ちに似ていた。 樹頂部までこぎつけた。 頂上まで登 りつめたのでしょう。 「きっと、この樹の仕事を見て、ひ どく苦労して作ったと思うでしょう ね。 それではダメなのです。 」 苦労をしたとわかる仕事を残して は、本当のプロとはいえないかもしれない。 プロとして、畑作りの樹を何10本と仕上げることもある。 自分 にとっては、決して難しい仕事ではない。 複雑なところがない、素直な樹づくりなのに、思うように手が動いてくれなかった。 今まで、こんなことはなかった。 「反省しています。 自分の未熟さを痛感させられました。 何か、もう一度、自分のプロとしての姿勢を問い直させてくれたような気がします。 」 いつも壁にぶつかり、それによってはね返されては、また立ち上りもうひとつ、先の段階へ進もうとする。 |